1987年 8月30日 有明コロシアム
2日目の尾崎の声は少し枯れていた。
1曲目の「LIFE」からいつもよりも言葉に重みを置いたような歌い方が強調される。
「DRIVING ALL NIGHT」、「BOW!」とロックナンバーが続く。
12弦ギターをもった尾崎が照明に照らされると歓声があがる。
「こんばんは・・・今日はわざわざ・・・ようこそ・・」
そう挨拶すると、「街角の風の中」が始まる。
口笛のようなフルートが送り出され、ピアノが軽やかにリズムを作る。
歌終えると、彼は
「どうもありがとう・・」
と肩で息をしている。
そこから「失くした1/2」、「誰かのクラクション」、「FORGET-ME-NOT」「ILOVEYOU」とバラードが続く。
ギターを持った尾崎は語る。
「少し前に、俺の友達に会った・・・・中学生時代の友達に・・随分と変わってしまったとぼやいていた、今の俺の気持ちは届くのだろうか・・」
そう言って始まった「15の夜」
しかし尾崎は途中で歌うのをやめる場面もあった。
力強く歌うと最後にはかすれた声しか出ていなかった。
曲が終わると同時にドラムがリズムを刻む。
「最近・・・・こんな夢を見た・・・・ NYで暮らしていたときの夢を見たんだ・・・部屋の中には部屋の中はとても散らかっていて・・・・・・・食べかけの冷えたピザがテーブル上に置いてある。
窓の外を見ると・・・・いくつもの打ち上げ花火と・・・・・遠くの街へ目をやると・・・昔の恋人が肩を寄せて2人で歩いていた・・・・その窓から身を乗り出して・・・・辺りを見回すとその窓は雲の上よりも高いんだ・・・・・・それに気づくと僕は何度もそこから転げ落ちそうになった
そのたびに冷えたピザを口にほうばりながら・・・・僕は目を覚ました。
そしてバラバラの途切れ途切れの思いとそれを途切れ途切れの地図につなぎ合せるんだ・・
「セブンティーンズマップ!!」
10曲目に「十七歳の地図」、「路上のルール」と続く。
「存在」ではステージの周りを走りながら、10分近くに及んだ。
尾崎はマイクスタンドを引き寄せると、話し出す。
「みんな、俺がNYにいったときの話を聞いてくれるかい!? NYの夏の夜はうだるような暑さだった・・・・・・・
土曜の夜のブロードウェイってのはいつも・・・たくさんの黒人のニイチャンたちが集まってきて・・・こんなにでっかいラジカセを持ち合ってみんなでタケノコを踊ってるんだ
なにも知らない俺はそこを肩で風を切って歩いていた。
すると後ろから声がした・・・
ニイチャンちょっと待ちな・・・
俺は慌てて振り返り・・・また振り返ると走って逃げた。
走り疲れてそろそろダウンタウンのほうにに近づいてきたら、また別のニイチャンが俺の前に立ちはだかっていた。
ここは俺の縄張りだ! 通るんだったら金を払いな!
いい気になった俺はポケットに手をつっこみながら考えていた・・・いくら出そう・・・
そこで俺は10ドルとられた
慌てて俺がまたミッドタウンのほうに引き返すと・・・ブロードウェイは避けて通った・・・
歩き続けていると・・・するとそこはもっと危険な場所だった・・・黒人のニイチャンが俺のほうに近づいてきて・・・
ニイチャンいいものやるからここで待ってなって・・
俺は喜んで待っていた・・・
そこで100ドルとられた
ちょうどアップタウンに俺が住んでいたそばの通りの教会の横にまたこんながたいのいい黒人のニイチャンが俺にむかって、なんとかポーズをしながら歩いてきたんだ
Hey.karateman? OK
You Gutter To Fight!」「You Gotter To Fight!
Your No chance! Your No Chance!
俺は心の中で叫び続けていた、ロックンロール・・・ロックンロール・・ロックンロール!!
みんな俺がハイスクールロックンロールって曲を知ってるかい?
All right・・・・
come on saxphone ・・・・1! 2! .1!2!3!! 4!!!
サックスソロが吼える
朝早くおきて俺がマクドナルドで飯を食っていると、10人ぐらいの小学生が・・・黒いのや白いのや茶色いのが俺のほうに近づいてきてこう言ったんだ
Don‘t touch me Rcck‘n‘Roll・・・・
俺はそれを聞いたとき思ったんだ・・・一生ROCKしていくしかねえってな・・・
みんなついてくるかい!?
みんな用意はいいかい?
1!!
2!!!
3!!!!!
とだんだん、音のトーンが下がっていく・・・
コンサートは進むと・・・尾崎は・・アンコールにこたえる
昨日の「ISM」と変わって「紙切れとバイブル」を歌った。
3時間近くのライブを終えると尾崎は楽屋でスタッフたちと簡単な打ち上げをする。
8月は終わろうとしている。