matagorou’s blog 尾崎豊 自由に生きられるかそして感動を得られるか

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マックの朝コーヒーがなんと0円! 無料で配るその真意とは?

ロッテリアの“絶妙バーガー返金保証”に続いて、ファストフード業界からまたまた驚くべきニュースが飛び込んできた。ファストフード業界のガリバーであるマクドナルドが7月24日から1週間、プレミアムローストコーヒーのSサイズを朝の8時から9時の間、1人1杯限定ではあるが、なんと無料で提供するとの発表を行ったのだ。(関東地域のみ)

 マクドナルドのプレミアムローストコーヒーといえば2008年のオリコンの調査で「買いたいコーヒーNo.1」に輝いたこともあり、話題を呼ぶことは間違いない。ただ、なぜマクドナルドはコーヒーを無料で提供するのだろうか?今回はその真意をマーケティングの視点から考えていくことにしよう。

 まず、1点目として考えられるのはお客様に来店していただく「フック」としての役割だ。売り上げというのはお客様に来店していただかなければ、いくら素晴らしい製品やサービスをそろえていても上がらない。そこで企業は、お客様に来店していただくのに多大なコストをかけてさまざまな方法を試みる。

 例えば、家電量販店などは来店するだけで現金と同じように使えるポイントを進呈しているし、個人向けの金融機関や住宅販売業者などでは来店するだけで500円から数千円の商品券を提供しているところもある。

 それを考えると原価にして1杯数十円のコーヒーでは比較的低いコストで集客が見込める。50円がコーヒーの原価だと仮定すると、マクドナルドでは100万杯の提供を見込んでいることから延べ100万人の集客で5千万円のコスト負担ということになる。多くのマスメディアに取り上げられる広告効果と100万人の集客効果を考えれば、その金額がいかに安いかは疑う余地もないだろう。

 続いて2点目は、「クロスセリング」でついで買いの売り上げが見込まれる点だ。もちろん、コーヒーだけを注文する客も相当数に上るかもしれないが、中には無料のコーヒーだけでは申し訳ないということで、ハンバーガー類の注文をする人も多いはずだ。

 マーケティングでは、赤字覚悟の目玉商品を用意して多くのお客様に来店を促すロスリーダー価格政策が取られることがある。このロスリーダー価格政策を実施する際には、来店した顧客に目玉商品以外の利益率の高いほかの商品をあわせて購入してもらい、トータル的に利益を確保する粗利ミックスを実現することが成功の重要な鍵を握る。

 目玉商品だけを購入する顧客は“チェリーピッカー”と呼ばれるが、このチェリーピッカーだけが行列を成して押し寄せるようでは、企業側にとっては骨折り損のくたびれもうけになりかねない。その最悪のシナリオを避けるためにも、無料のコーヒーにあわせてほかの商品を買ってもらうことで、収益の帳尻を合わせることができる。

 そして最後の3点目は顧客の「返報性の原理」に期待することだ。通常、人は他人から何かを施してもらった時に、お返しをしなければならないという感情を持つ。これは心理学で「返報性の原理」と呼ばれ、ビジネスでもさまざまなシーンで活用されている。

 例えば、試食。試食は無料で食品を提供するプロモーション戦略であるが、販売員から直接食品を手渡されると、何だかその商品を買わなければいけない気持ちになったことはないだろうか? 昔から「一宿一飯の恩義」という言葉があるように、人は何かを施されると返さなければいけないという気持ちがわいてくるものなのだ。

 そこでコーヒーを無料で提供すれば、この「返報性の原理」が働いて、その場で何か商品を勧められれば購入したり、たとえ購入しなくても知り合いにマクドナルドの良い噂を流したりと、コスト以上のリターンが見込める可能性もある。

 いずれにしろ話題性の高いプロモーションだけに、ロッテリアなどの同業ばかりでなく、スターバックスなどのカフェ業界も戦々恐々としているに違いない。マクドナルド、恐るべしである…