1986年 12月23日 新宿
やっとの思いで帰国した尾崎はその夜新宿で家族と食事をした。
代金は尾崎の奢りということであった。
この時の尾崎は終始機嫌がよくたまに帰国して見せる憂鬱そうな顔はしていなかったように思える。
しかし兄康氏にすれば久しぶりに会う弟豊はまるで別人のように見えたという。NYでの生活ぶりが少しはうかがえるようなものであった。
家族の確認したいことは麻薬と彼との関係や距離であったかもしれない。
「帰国して、公然と音楽活動をするようになれば麻薬とは縁が切れるに違いない」
というのが両親たちがすがるようにして願っていたことでもある。
尾崎はこの日家族との食事を終えるても一緒に家には帰らなかった。
少し確認したいことがあった。
彼のホームグランドである街、東京の今を見ることであって、都内のホテルをいくつか泊まり歩こうと思っていた。