1986年 12月中旬
日本へ帰ることを尾崎は決めた。
6月、夏の真っ盛りにマンハッタンで暮らし始めて半年になろうとしている。
覚えたのは麻薬と危ない連中から逃げるために息を潜めることくらい。
音楽の勉強といっても1人で寂しく
1人ぼっちでの生活だけだった
食事もおいしくない、ホームシックにかかりつつも手ぶらでは帰れない気持ちでいた。
しかしこのままNYで暮らしていても何も始まらないんじゃないか?
という少しの疑問が数日の間で大きなものになっていった。
日本に帰ってかすぐに仕事を始めるわけじゃない。
新しい自分の音楽を展開するためにゆっくり時間をかけていきたいというのが希望的観測であった。
決心してからの行動は早かった。
すぐに日本にいる家族には帰国することを連絡した。
事務所にも連絡すると、部屋の整理のためにマネージャーのソラチがNYに来るという話だった。
23日の便で帰ることになり彼の部屋の整理が必要になった。
アップタウンで過ごした2ヶ月弱の生活ももう少しで終わりを告げようとしていた。