1986年 10月
アパートに着くと、部屋のチャイムを鳴らしてみる。
ようやく尾崎が出てくると宮原さんは目を見張った。
ボサボサの髪、青白い頬、生気のない瞳。
虚脱して憔悴しているような尾崎の姿に宮原さんは驚きながらも
「おい、俺をいつまで空港においてきぼりにするんだ」
と思わず言うと
「今日来るんだっけ?」
という尾崎の返事であった。
部屋に宮原氏を招き入れると、少し散らかったリビングのソファーに腰かける。
テーブルの上に置かれた作詞のノートだけが昔と変わらないものでもあった。
宮原氏が久しぶりに見た尾崎はボロボロな姿であった。
このNYという街について尾崎は宮原氏に話し出した。
主にこれまでに起ったことを話した、喧嘩をうられた話や街のギャングに隣人の殺害・・・・
挙げればキリがないほどこの街が生み出すものは異邦人である2人は信じがたいものであったろう。
尾崎はジャケットを着ると、外に出ようと宮原氏を誘った。