1986年 12月
どうやって家に帰ろうかと思い迷ったが、道を聞きながら歩いて自分の家に帰ろうと決めた。
遠くに見えるワールドトレードセンターが小指くらいの大きさで見えた。
それを目当てに歩き続けたけど、やがてそれも見えなくなってしまった。
尾崎はポケットに手を突っ込んで立ち尽くしていた。
ポケットには紙切れがはいっていた。
レシートかと思っていたら10ドル札であった。
煙草を買おうと思ってコートにいれておいたものだったんだろうと尾崎は思った。
そのお金で地下鉄に乗って帰ることにした。
どこまで乗っても10ドルというのが幸いであったけど、地下鉄に乗っていた時間は2時間。
しかし仮の住まいであっても自分の部屋があることがこんなに大切だと思ったことは初めてだったと尾崎はこの時のことを回想して思ったという。
それからまた尾崎は机で散文を書き続けた。
曲も端々を作りながら少し出口が見えていたかもしれない。