matagorou’s blog 尾崎豊 自由に生きられるかそして感動を得られるか

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米軍キャンプ


【米軍キャンプ】 ☆ 尾崎豊に会える日
3rdアルバム「壊れた扉から」収録
英題 BASE CANP
僕が思うには彼の歌の中でもかなり暗い部類にはいると思う曲です。
米軍キャンプとは彼の生家練馬にあった「グラントハイツ(光が丘)」(第18代大統領、グラント将軍の名から命名されたが、当時はグランドハイツと発音)
という米軍基地の住宅地跡のことで、ここに工場があった。(現在は光が丘団地
以下 誰かのクラクションより 米軍キャンプ

夜に黒く染まった窓ガラスの下で、クラクションが小刻みに2回
鳴った。だから、少しげんなりとした気持ちで窓から首を出して
みると、今にも闇に解けてしまいそうな紺色の車が、寒さに耐える
みたいなエンジンの音を立てながら止まっていた。
何かをひと言探しているみたいに口を半分開けたまま、彼女はドア
ウィンドウを開け、俺に気がつくと、力なく俺に向かって手を伸ばし、
一度だけ手を振った。だから、僕も一度だけ手を上げて返事を
したんた。
俺には、いつも行き場がない。
街をふらついていても、友達に出会うことはまずないし、店も
もう閉まっている。
そして、いろいろと思い浮かべているうちにとりとめがなくなって、
部屋の蛍光灯の小さなノイズと俺の気持ちは共鳴して、俺は今
ここに存在し、今なにをするべきなのか、そんな問題に頭を悩ませ
てしまっている。
そうでもしないと、自分自身が無いみたいに思えてならないんだ。
だから、僕は彼女が訪ねて来るのを拒めない。
きっと、互いに愛し合っているわけじゃない、少なくとも俺の思い描く
愛より、もっと冷えきった気持ちだし、友情よりは同情、傷を舐め合う
だけのような関係がずっと続いている。でも彼女にとって、今夜辿り着
けるところが、唯一、俺のところだったなら、こんな俺に、どうして
追い返すことができよう。
俺は助手席に乗り込んだんだ。

昔、米軍キャンプだった広い敷地の中を走り、はずれにある工場
の近くの公園に車を止めた。
夜だというのに、工場の大きな煙突から、暗い夜空に白い煙が
吐き出され、少しだけ幻想的な気持ちになった。
横で彼女は、来る途中、24時間営業のスーパーマーケットで
買ったおにぎりとコーラを少しだけ上品に小さな口で食べながら、
ちっとも色っぽくない口調でしゃべりはじめた。
”この間、誰かとデートして車に乗っている間じゅう喧嘩してた”
とか、”もう一人の彼氏にうっかり知られてしまって、それを怒られ
るかと思ったけど、その人は、あたしのことを、まだ信じているって
言ってくれた”だとか・・・・・
最近、仕事に行けず悩んでいることがあるって聞いた時には、
少し耳をかしたけれど、その信じられている彼氏の子供を、つい
この間堕ろして、3日寝込んで仕事を休んでいたらしいんだ。
俺は、ずっと、煙突から吐き出される白い煙の切れ目を数えながら、
話を聞いていたけれど、ほんとうに言いたいことは、何もかもが淋
しさの代償みたいに思えてしまって・・・・・そんなことじゃないかって
思っていた。


彼女にとって、彼女を求めない俺が不思議に思えたのかもしれ
ないし、彼女自身、今夜は求めていたのかもしれない。
悪戯した後、子供が謝るみたいな、そんな口調で、”抱いて”って
言ったんだ。
”どうして”なんて聞いた俺も馬鹿だったけれど、そんなこと、聞こ
えなかったみたいに、それからもう一度、”抱いて”って言った。
しばらく互いに沈黙して、それから、”ねぇー”なんて笑いながら
抱きついてきた。
いつもなら抱いていたけれど、その時はただ黙って彼女の髪の
毛を撫でながら”もう帰ろうか”って言い出すまでに、何度も口づけ
ていた。
でも、”朝まで、ここにこうしていたい”っていう彼女を、どうすること
もしたくなかったし、ぬくもりが、ほんの少し愛みたいだったんだ。
朝が来ればきっとやりなおせる、そう思うほかないみたいに、
朝が来るのを、待つことにしたんだ。


子供を堕すことは、彼には教えていなかったらしく、何もかも
終わってから、彼に告げると頬を殴られたそうだ。
”あたしって甘えてるのかな、甘やかすから私ってだめなの”
彼女は人混みの中に行くと、何度も戻してしまったり、だめだと
思い込むと、何もできなくなってしまうんだ。心の病なんだ。



大通りまで走ってもらった。
”どこへ行くの”って聞く彼女に、”あともう少しだよ”って答えて、
赤信号につかまった時、俺は”またね”って、なるべくやさしく彼女
に笑って、後ろから来たタクシーに乗り込んだんだ。
そこまでわかってる君に、俺はもう何もしてやれないよ。もし今の
君がつらいなら、あとはもう君自身が考えなければ・・・・・
”誰の子供だった”のって聞いたと時、”あなたのよ”って言われた
時はびっくりしたよ。
淋しくなったら、、またここに来て、俺に話していけばいい。