matagorou’s blog 尾崎豊 自由に生きられるかそして感動を得られるか

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尾崎豊 『街路樹』(2枚組スペシャルエディション)発売記念 制作担当者インタビュー

http://wmg.jp/wmlife/sp/ozakiyutaka/

上記URLより

街路樹(2枚組スペシャルエディション)(Blu-spec CD)

 


今から21年前の1988年の9月に、不世出のシンガーソングライター尾崎豊が発表した、4枚目のアルバム『街路樹』が、その先行シングル2作品(『核(CORE)』、『太陽の破片』)のカップリング曲も含めた4曲を2in1としてディスク2に収録し、“2枚組スペシャルエディション”として再発売されることになった。
またこのリリースでは、オリジナルアルバムの音源が初のデジタルリマスター仕様となり、さらに同社初の高音質Blu-spec CD(TM)でのリリースという。
早速、取材のためワーナーミュージック・ジャパンにお邪魔し、担当の川端氏に色々と話を伺ってきた。

そのインタビューの内容をお届けいたします。


Director 川端淳也 インタビュー
聴き手 : ワーナーミュージックライフ編集部

――早速ですが、今回の再リリースにあたっての最初の構想はどのようなものだったのでしょうか?

川端淳也:今回の再リリースにあたって一番に目指したのは、アルバム『街路樹』を最高の音質で蘇らせることでした。そして、もうひとつ考えていたことがありまして、それは1990年の再発売を最後に長らく手付かずだったシングル盤「核(CORE)」と「太陽の破片」をもう一度リリースしたい、ということでした。

――それが最終的に、シングル盤はシングル盤のままではなく、アルバムとの2枚組での発売となりましたね。オリジナルアルバムに新しく別の要素を加えるということは、必ずしも歓迎されない場合もあります。今回はどのような意図があったのですか?

川端:今回のリリースを考える中で、これらの音源を改めて何度も何度も、繰り返し聴き返しました。そして、2枚組化を選んだ一番の大きな理由は、シングル盤の、アルバム未収録だった楽曲はもちろんのこと、アルバムでは別ヴァージョンで収録された「核(CORE)」「遠い空」の2つのシングル・ヴァージョンも、この時代(’87~’88年)の尾崎豊を知る上でとても重要な作品だと感じ、それらの楽曲をもっともっと多くの皆さんに是非聴いて頂きたい、という想いに至ったことが最終的な決め手となりました。

――確かに、尾崎豊さんは10代のうちに3枚のアルバムを立て続けに発表したものの、その後の4枚目のアルバムの完成までには数年の時間を要し、制作は難航したと言われていますね。

川端:そうですね、20代に入り、10代の頃とは異なる環境の中で、プレッシャーを感じたり、自分自身の成長に苦しんだこともあったのだと思います。歌詞もこの頃から大きく変わってきました。 本作収録の「時」という曲の中で、“大人への憧れ”が歌われる部分があるのですが、それは、表現者としての変化と成長をまさに遂げている最中の心の表れだと感じています。

――それでは、制作の過程を教えていただけますか?

川端:まずは、マスターテープを探すところからはじまりました。リマスタリングをするためです。

――アルバム『街路樹』は13年ぶりの再発売だそうですが、マスターテープが行方不明になっていたわけではないですよね?

川端:はい。CDを製造するためのマスターテープはもちろん現在も当社のほうで保管しています。しかし、同時にシングル盤のマスターテープも、アルバムのマスターテープも改めて探していました。先行シングルの「核(CORE)」「太陽の破片」とアルバム『街路樹』はいずれも、’87~’88年の発表当時、アナログレコードとCDの2つのメディアで発売されていたんです。

――つまりレコード用のマスターテープを探していたのですね。そのマスターは見つかったのですか?

川端:いいえ、残念ながらレコード用のマスターは見つけられませんでした。そもそも、CD製造用のマスターと別に、アナログレコード用のマスターが存在していたはずだ…と仮説を元に探し始めた状態で、情報に乏しかったこともあり、結局そのマスターの存在を特定できませんでした。

――レコード用のマスターテープを探されたということは、CD用のマスターテープよりもレコード用のマスターのほうが一般的にクオリティが良い、というような理由があるものなのでしょうか?

川端:手元にあるもの(CD用のマスター)以外のもので、世の中に、もしより良い状態のものがあれば…という気持ちで探していました。複数の用途のマスターテープが揃えられれば、そこから一番状態の良いマスターテープを使って最良の音質による復刻を行う、ということを考えていました。つまり、最終的に「やっぱり手元のCD用のマスターが一番状態が良いものだった」となれば、それはそれで良いかなと。何はともあれ、もしかしたらより良くなる可能性をほかに残しながら、捜索もせず手元の素材だけで判断して済ませる、ということにはしたくなかったんです。

――それで、結果的にはCD/レコード用マスターよりさらに源流の、オリジナルマスターが見つかったんですね?

川端:はい、そうなんです。ワーナーミュージックの倉庫はもちろんのこと、オリジナル発売当時の販売元であった日本コロムビアさん(現:コロムビアミュージックエンタテインメントさん)にも捜索の協力を頂いたりしました。残念ながらそれでも探していたマスターテープは見つからなかったのですが、そうこうして、再発売の基本的なアイデアがスタートしてから3ヶ月近くが経ったある日、「何本かのマスターテープがありそうだ」と別の関係者から連絡が入りました。

――根気強く探した甲斐があったわけですね。

川端:はい、それはもう、とても嬉しい知らせでした。探していた以上のものが見つかったわけですから。
「今回のリリースが、当初のイメージ以上のものになる」という実感が湧いた瞬間でした。


――それでは、リマスタリングについてもお聞きしたいのですが、なぜこのタイミングでのリマスタリングになったのですか?

川端:そうですね…。それについては、1996年以来の再発売がなぜ今年なのかと言うことも同じなのですが、何かご縁のようなものだと思います。同じタイミングでソニー・ミュージックレコーズさんの作品も発売になりますが、この同時再発売が実現したのも、実はどちらかがどちらを誘ってということではなく、自然発生的に同時に再発売を考えていたという偶然で、そのことを知った時には私も驚きました。

――今回の再発売の大きな魅力となっている“リマスタリング”とはどういうものなのか、読者の方に簡単にご説明いただけますか?

川端:そうですね、“リマスタリング”というのは、一言で言えば既存の音源を改めて磨き上げる作業のことです。どのように磨き上げるかは、色々なアプローチがあり、仕上がりについて言えば唯一絶対の正解というものは存在しない、難しい作業です。

――この『街路樹』では、そのリマスタリングをどのようにアプローチしたのですか?

川端:実は、今回のリマスタリングは、当時の尾崎豊の作品にプロデューサーとして、また『太陽の破片』、『街路樹』ではミキサーとしても作品に関わられていた吉野金次さんに担当頂きました。作品自体を知り尽くされた方なので、リマスタリングのアプローチ方法も吉野さんに全てお任せしました。


――吉野金次さんはこの業界では大変有名なレコーディングエンジニア/プロデューサーですが、マスタリングも手掛けられるのですか?

川端:はい、そうなんです。「レコーディング」と「マスタリング」は深く関連しながらも、それぞれ専門性の高い別分野のため、一人のエンジニアがその両方をこなすことはあまり無いのですが、吉野さんはマスタリングの分野においても高い技術をお持ちで、その意味でもリマスタリングを施す場合は吉野さん以上にふさわしい方はいないだろうと考えていました。ただ、吉野金次さんは数年前にご病気をされてしばらくお仕事をお休みされていました。それが今回、吉野さんがお仕事に復帰されたことを知り、『街路樹』のリマスタリングも手掛けて頂くことが出来、アルバム『街路樹』にとっては、これ以上ないマスターテープと、これ以上ないエンジニアの手を借りて最高の状況でのリマスタリングが実現しました。

――そうだったんですか。それは良かったですね。吉野さんも、尾崎豊の作品にとっても。
それで、“リマスタリング”によって新しく磨かれた音はどのような仕上がりになっていますか?

川端:私は、このリマスタリングされた音源を初めて聴いたとき、言葉を失い、ただ無言で聴き続け、そして大きな感動に包まれました。吉野さんの手による今回の“リマスタリング”の効果は、ぜひこのインタビューを読まれている皆さんご自身の耳で聴いて、感じて頂きたいので、ここでは詳細にはお話ししませんが、とにかく素晴らしい仕上がりです。

――この作品では、さらにワーナー初の「Blu-spec CD(TM)」でのリリースとなるそうですね。昨今話題の高音質CDの中からこの方式を選んだ理由をお聞かせください。

川端:一言で言うと、ファンのためには作品数の多いソニーさんの方式と揃えたほうが親切かなという部分は正直ありました。私自身は昨今話題の「SHM-CD」、「HQ CD」、「Blu-spec CD」の3つの高音質CDにはそれぞれ一長一短があると感じていて、いずれにしても通常CDに比べて魅力的な部分はあると感じていますので、他の方式を採用したらどうなったのか、そう考えるのも大変興味深いですね。

――何か告知などありましたらご自由にお聞かせください。

この作品では、ブックレット上などで当時のシングル盤の要素、つまりシングル盤の歌詞カードのフォントやディスクレーベル面のデザインなど、可能な限りそのまま盛り込んで、オリジナルの雰囲気を再現することに務めています。それらの部分にも注目を頂きましたら嬉しいですね。

川端:それからもうひとつ、お伝えしておきたいことがあります。実は、この2枚組スペシャルエディションは、その合計収録時間の長さからみれば、合わせて1枚のCDに収録することも可能な内容です。それを2枚組としたことにより、価格も3,600円まで上げざるをえなかったことも事実です。しかし、アルバム『街路樹』はタイトルトラックでもある9曲目の「街路樹」で締めくくられて完結する作品であり、この作品のこの曲の後ろにはいかなる楽曲も収録されるべきではない、というのが私の信念でもありました。それゆえ、2枚組仕様を選ぶに至りました。ファンの皆様の中には、このリリースに対して複雑な思いをされている方もいらっしゃると思います。しかし、今回のリリースは、リリースに関わった全てのスタッフの、尾崎豊という不世出のアーティストへの愛情が注がれて実現した再発売となっていることだけはお伝えしておきたく思います。

――最後の質問になります。このアルバムをどのような方々に聴いてもらいたいですか?

川端:従来からのファンにも、初めて『街路樹』に興味を持っていただいた方にも、この、リマスタリングによって新たに生まれ変わった『街路樹』が一人でも多くの方に聴いて頂けることを願っています。

――ありがとうございました。

川端:ありがとうございました。

 

 

街路樹(2枚組スペシャルエディション)(Blu-spec CD)

街路樹(2枚組スペシャルエディション)(Blu-spec CD)

  • アーティスト:尾崎豊
  • 発売日: 2009/04/22
  • メディア: CD
 

 

街路樹

街路樹