matagorou’s blog 尾崎豊 自由に生きられるかそして感動を得られるか

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長野県民文化ホール

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1985年7月30日長野県民文化ホール
昨夜の金沢のコンサートを終え翌日は移動をして、長野でライブ。
開演時間の6時30分SEのテープが止まり。客電が落ちたステージにはハートオブクラクションのメンバーが暗いままのステージにぞろぞろと現れる。
 
その1分ほど間を空けた頃尾崎が現れ、観客たちの賑やかな歓声が尾崎を迎える中、ピアノが鳴り出しマイクの前に立った尾崎はこう話す。
 
「15のとき俺は・・力もなく愛情に植えていて、物を盗むことや人を傷つけることが当たり前だった。今夜ここに集まってくれた、そんな似たような仲間のために歌いたい」
フラグを抜かれたスピーカーのように静まり返った会場と観客、っして尾崎は慎重に言葉を選びながら、語りかけていく。素直に自分らしくあろうと掲げた十代の尾崎のシーンというものがここにひとつ反映されているのではないかと思う。
 
長いハープの演奏の末に始まったピアノのイントロ1曲目は「15の夜」そして以前よりはビート感を増した「Driving All Night」に「Bow!」とロックナンバーが盛り上がりを見せた。ゆったりしたテンポにアレンジしなおされた「街の風景」、ライブではスタジオテイクと違い、元に尾崎が描いた原型の姿「町の風景」を描いているようだ。
ダンスホール」では6弦ギターにブルースハープを吹く、スタジオテイクを模した形で行われた。
 
一度照明が落ち、会場は真っ暗になる、尾崎は1人グランドピアノのあるステージ上段に上り、マイクを調整する合図を出すとバックライトに照らし出された尾崎のシルエットがPV卒業に描かれた尾崎のシルエットと重なって見る。尾崎は語りだす。
 
「エー人は何か新しいものを目指したり、何かにケリをつけたとき、涙を流すんじゃないかと思うんだけれど、そんな風に流す涙を見るたびに、その涙がそいつにとってむくわれる涙であったらいいと、いつも思っているんだ、けど。そんな涙のためにむくわれるように、祈りをこめて作った曲を歌います」
 
「卒業」で尾崎はこのツアーで同じような涙に関する話をこの曲への決意と祈りという形で話している、そんあ曲の最中座っていた人たちが2人、3人、立ち始め、曲が終わる頃にはほぼ全員が立ち上がっていた。
大きな拍手と「尾崎!」そう彼を呼ぶ掛け声で溢れた。
 
上段のピアノから降り、遠かった尾崎と観客の席は急速に縮まり、ステージ中央に姿を現したその尾崎の顔には笑顔が見えた。曲は「Teenage Blue」そのブルージーなロックは以前の高知と比べるととても落ち着いた姿にも見えたようである。続くまだ収録されていない曲「米軍キャンプ」のイントロで尾崎の12弦ギターを音が出ないアクシデントが起こった。心臓の鼓動に等しいビートだけが響く緊張した空気の中
 
「やめてよ!」
そんな女の子の声、一瞬シンセサイザーによるビートも止み緊張は一段と増す。
 
そしてもう一度
 
「やめてよ!」
同じ声だ。
ステージではギターを取り換えた尾崎が、演奏を続けるように指示を出してマイクに向い、こう語る。
 
「この曲は昔付き合っていた女が病気にかかって、ひとりで電車に乗ったり、街の仲を歩いたりできなくなったんだ。彼女のために作った曲なんだ、お前ら静かに聞いてくれ」
 
無意味な争いを避け、また尾崎は自分自身を押さえつけるように頭に血が昇った仲間に言い聞かせているような調子でよく似はいっていった。ギターのバランスも力の入り具合は乱れているが、緊張によりこの曲はドラマティックな仕上がりとなった。
 
気を取り直して「坂の下の見えたあの街」には観客からの沸き返るような感性と拍手で迎えられ「Scrap Alley」ではサックスプレイヤーとのステップを踏み、「存在」で観客との壁は取り壊されたような形となった。
 
ここでMCがはいる。
「今度は俺が高校生だった頃の話を聞いてくれ」
そう切り出す尾崎はメンバーたちと自分の高校時代を振り返り、自分を白い目で見ていた生徒たちとの芝居をメンバーたちとステージで行う。
バンドと一体となって演奏する「ハイスクールRock`n`Roll」間奏で尾崎は客席の女の子をステージに引っ張り上げてコーラスをしたり、マイクを向けたり、以前の荒らしいステージからは想像もつかないことをやりはじめた。
 
次曲「Scrambling Rock`n`Roll」でもそうだ、伸び伸びと観客と一体化して歌うようなことはこれまでには一度もなかったからであり、観客と壁のあるコンサートをどう行っていくかが、疑問であったがこのステージではその壁をあますことなくぶち壊すことに尾崎は成功し、思い切ったことをやって結果としては一体化ということを図れたのであろう。
 
「Seven teens`Map!!!」彼の合図と共にドラムが曲へとはいっていくが、サビでは客席にマイクを向けて、観客と一緒に歌う姿を尾崎は見せた。
これが19歳の素顔とも言うべきであろうかと、推測することもできる。
 
ラストナンバー「愛の消えた街」ヘビーリズムに合わせて振る腕リズムに重なり、その腕は汗にぬれたタンクトップを真っ二つに切り裂き。1stステージは終了。
アンコールとオザキコールで沸き起こるステージに尾崎は応える。
 
アンコールナンバー「Freeze Moon」
複雑というほかなく、詩の内容を尾崎はよく書き直している、またしゃべる語りの部分もすべての会場で統一性というよりも今の素直な気持ちを伝えているようにも思う。
1曲の時間にして約20分近いこの曲は「未整理」「整理中」「工事中」などという表現がこの時期にはお似合いかもしれないが、完成度よりもステージのための疾走感を思えば、kれほどエネルギッシュなナンバーはないであろう、メンバーの紹介を行い、それにメンバーもこたる
「俺たちハートオブクラクション!!」
バカ騒ぎが好きな青年たちは夜の街で誰にもわからないような独り言を演じるために必死だったようにも思える、そんな各人の思いが錯綜する曲ではないだろうか。
 
ロックナンバーを終えた尾崎は再度のアンコールに応え、12弦ギターで淡々とした調子で「シェリー」を弾き語る。
このナンバーを最後に尾崎はステージを去った。
 
このステージのテーマは以前から尾崎が観客ではなくスタッフとも行うことを重視して言ってきている「コミュニケーション」ではなかったろうかと思う。
バンド、観客との一体感、そして今日初めて会う人、今日しか会えない人々と尾崎との間にある壁をどうなくしていくか・・・
 
尾崎はこのステージで一度もマイクスタンドを振り回さなかった。
尾崎はステージを終えて語る。
 
「マイクスタンドやギター、ハーモニカって僕の肉体の一部みたいな気がする。だから新陳代謝していくものも必要なんじゃないかって」
 
ステージはまるで尾崎という1人の人間の延長線上にあるものだと考えれば、毎回激しい新陳代謝を繰り返し、またその成長スピードがこれほど速いものもいなかったであろうと考えることができる。