1985年 11月15日 代々木体育館
1日空けた代々木体育館にも観客は押し寄せる。
多くの関係者も彼のステージを見るために関係者席は背広を着た人々で埋め尽くされる。
午後6時を過ぎた頃にバンドメンバー、ハート・オブ・クラクションが姿を現すと、大歓声のまま迎えられるが、灯りもないステージは真っ暗のままSEが切れると同時に袖から現れた尾崎はピアノに座ると静かに「卒業」のイントロを弾きだす。
1曲目は「卒業」そしてギターをかけてセンターマイクに立つと新曲の「彼」そしてライブでは定番となってきたロックナンバー「Driving All Night」「Bow!」と続く。
ドラムのカウントが入ると5曲目の「街の風景」は以前とはまた違うピアノアレンジを経て生まれ変わり「ダンスホール」も同じようにブルースハープとピアノを基調としたスタジオテイクを少し想起させるがスローテンポな仕上がりとなっている。
12弦ギターをローディーに渡すとピアノが奏でるイントロを聞きながら尾崎はマイクをもってピアノの上にこしかける。
7曲目の「Teenage Blue」へはいってゆき、そのまま心臓の鼓動のようなビートを刻みながら少し形が変わった「米軍キャンプ」で尾崎は叫ぶ、その声で会場の客たちは尾崎の声にのまれてしまっている。
と言うと始まったのは9曲目の「坂の下に見えたあの街へ」で途中でギターの弦が切れても気にせずに尾崎はギターをかき鳴らして、曲を終えると次の「Scrap Alley」が始まるといつものように喋り出さずにそのまま歌い出したが、その合図と声に気づいていたメンバーはドラムスの吉浦氏だけであったようで、音がすぐには追いついていなかった。
ステージを右往左往してからサックス奏者の阿倍氏と絡みを終えた尾崎は11曲目の「存在」を歌いきってからドラムビートが刻まれる中語り出す。
「俺は最近、こんな風に思っている。若さってのはルールに縛られないことなんだ、そして自分に与えられたすべてのルールの中でいったいなにが必要でなにが必要でないのか、見分ける力も持っているのは若さだと思う。間違ったルールというのは人を傷つけることのみに方向がむかっている、だ足し胃ルールというのは人を愛することだ、みんな俺が作ったハイスクールロックンロールっていう曲を知ってるかい?
人を愛したいなら自分の心にむかって叫ぶんだ、それがロックンロールだ!」
そう言うと、いつものようにメンバーたちの演奏が始まる。
12曲目の「ハイスクールRock`n‘Roll」では間奏でピアノに登ってステップを踏んでハープを拭きながらの行進と広い会場を駆使したパフォーマンスを見せる
1万人の大合唱は彼らと尾崎を一つにする。
‘ロックンロール 踊ろうよ‘ロックンロール腐らずに~‘ロックンロール手を伸ばせば自由はあと少しさ‘
13曲目の「Scrambling Rock`n`Roll」では曲の途中照明のイントレに登り観客には豆粒にしか見えない自分の姿を強くアピールする。
‘自由になりたくないかい?‘熱くなりたくはないかい?
‘自由になりたくないかい?‘‘思うように生きたくはないかい?‘
‘自由っていったいなんだい?‘ ‘どうすりゃ自由になるかい?‘
‘自由になりたくないかい?‘ ‘君は思う様に生きているかい?‘
曲が終ってイントレから降りてくると、ドラムがビートを刻むなか尾崎はまた語り出す。
「この街で一番、愛を求めていくうえで必要なことは自分に関わる人や物を自分の鏡として見つめてみることだ、その中になる物事の真実を自分と照らしあわし、自分の求める愛の姿を俺はもう一度よく考えてみたい、愛するものというものに自分の命をかけて立ち向かわなければいえないと思ったんだ、少なくとも今日ここに集まってきてくれたおまえらの中に俺と一緒に本物の愛や真実をみつけようと歩いていく連中がいるならば俺はそいつのために命をはる、セブンティーンズマップ!」
MCが終ると尾崎は叫び、「十七歳の地図」が演奏される。
ギターのイントロと共に観客かわ沸き起こる大歓声をうけて尾崎は歌う。
15曲目の「愛の消えた街」ではアクシデントが起こり手の甲に怪我をしたが、暗闇の中では誰もわからないまま、コンサートは進む。
16曲目の「路上のルール」はライブで初めて聴く人々が多かったであろう。
「今日は本当にどうもありがとう、心を閉ざして今まで俺は自分以外のものを受け付ける心の広さをもっていなかったような気がする。今日は客席は真っ暗で見えないけれど一番後ろにいるお前の顔も俺にはよく見えるような気がする」
「俺が、信じられるなにかをさがしているような気がする。だから俺の言う言葉ひとつひとつがなんだかとっても突拍子もないように聞こえる人もいるかもしれない」
「俺は今まで自分がもっていた既成概念を捨てることからもう一度歩き出してみようと思ったんだ。ひとり、ひとりの悩みを俺が背負い込むことはできないかもしれない、ただそこに例えば俺の言葉を求めて僕となにかを分かち合おうとする、そんな人間がそんな人がいたら、俺はなんおためらいもなく抱きしめてやれることができると思う」
「ときには過ちを犯してしまうこともきっとあるだろう。だけど、過ちにさえ自分のこの体でぶつかってひとうひとつの物事を自分で解き明かしていかなければ、新しい第一歩は踏み出せないような気がするんだ、そのために傷つくことも多いかもしれない、そのために命を落としてしまうかもしれない、ただ俺は新しい第一歩のためにこの命をかける、それが俺の生き様だ、笑いたいやつは笑え、俺を信じるやつはついてこい」
「俺は真実を求め歩き続ける、お前らを愛している」
と、このツアーでは聞くMCとはまったく違うMCを語り終えてハープを吹こうとしたが、すぐにドラムスに指示を出して尾崎は曲を始める。
17曲目「15の夜」
圧倒的なボーカルで曲を終えると尾崎は「どうもありがとう」と小さく呟いていつものように、袖へとかけてゆきそんな尾崎を迎えたマネージャーのソラチはタオルを尾崎にかけるが、すぐさま客たちはアンコールの「尾崎コール」を始める。