1985年 11月29日 室蘭
ライブを終えたあとにも尾崎には取材という仕事がある。
‘えー、今日は11月29日っていうことで、ちょうど尾崎くんの20歳の誕生日の今、ちょうど11時半‘
‘なんですけども、20歳の誕生日を迎えて、どんな感じがする?‘
と尾崎は問われる。
「そうですねえ・・・・・うーん。それほど、変わった気持ちはしないですけども。
そう・・まあ、とてもこう、自分を熱くする気持ちと、なんか、こう、半々くらいあって。これをどう自分の中で処理していくかっていう・・・・・これからの目標としてなんか、そんなとこありますね」
と答えていく。
‘尾崎くんに聞きたいんだけど、「十七歳の地図」っていうひとつの地図を書いてね。
「ええ」
‘それで、十九歳になって、二十歳になって、二十五歳になって。それぞれの地図っていうのも書いていくのか。あるいは十七歳の地図だけを書いていくのか。どうなってくんだろう。‘
「うーん・・・・・やっぱり、十七歳の地図、十八歳の地図、十九歳の地図、二十歳の地図、二十一、二十二、二十三って、ずーっとこう・・・・・。まあ、それは年齢っていうことじゃないのかもしれないけれど」
‘うん。そうだね。‘
「ひとつひとつの過程を追いながら地図を書いていかなければいけないと思ってますね。
「それはやっぱりまず、自分の身近なものから地図を書きはじめていって」
「やがては、人間であることっこていうのかな、なんかそういったものの地図書けたらいいなって。人が生まれてから死ぬまでの地図を書きたいな、という気がしてます」
とこれまでの十代というものに決着をつけ、新しい二十代からの生活者としての自分を模索していた尾崎がいたことは事実であったようにも思う。