1986年 10月
アパートへの帰り道、タクシー乗って帰っていた。
アパートの前に車を着けて金を払おうとしたら、メーターよりも多い金を払えと運転手は脅してきた。
この街にいるインチキタクシーの類いだ。ナイフをつきつけられて尾崎は仕方なく有り金を置いて車の外に出た。
運転手は満悦な顔で尾崎を外に放り出すと車を停めて銭勘定を始めた。
「金を数えてる」
そんな姿が見えたが相手は武器を持ってる仕方なくアパートに戻ると懇意にしていたあの若いロシア人の青年がいた。
「どうしたんだ」
浮かない顔をしていた尾崎を彼は不思議がってロシア鈍りの英語で話すと、尾崎は
′さっきインチキタクシーに金を巻き上げられたんだ′
そんな風に素直に言ってみた。
すると彼は
「じゃあそいつに会いにいこう」
と外に出るとまぬけにもまだ金を数えているさっきのインチキタクシーがいた。
彼はタクシーの運転手を運転席から引きずりだすと数発殴り飛ばしてさっき尾崎から奪った金を奪い返した。
彼はなにもなかったようにまたフロントに座って本を読み始めた。
英語の本だった。
たった数分の出来事だったけど尾崎は部屋に戻って興奮していた。
自分がやったわけではないけどまたこの街の怖さに遭遇していた。
机に無造作におかれた酒瓶と粉末上の白い粉.....
久しぶりにギターを手にして作曲をするアップタウンに引っ越してきたのに安心することのない街でもある。