1987年 1月19日 東京
尾崎は久しぶりに事務所であるマザーのオフィスの扉に立っていた。
帰国して初めての出勤でもある。
話には移籍の話とこれからの活動の話もある。
ソニーとマザー二者択一を迫られてマザーを選択したのはNYまでやってきて説得していた二社の一方であるマザーが1日長く滞在して尾崎を説得したからであった。
自分はどちらにより必要にされているのか?
というのが尾崎にとって問題の焦点であったのかもしれない。
新レコード会社の社名はマザー&チルドレン(M&C)
という名前で来月の2月10日に発足することになっている。
設立に投じた資金は膨大であり、これからレコードを製作するにあたっても資本金は5000万円というものであった。
スタッフは3人、所属しているアーティストはHOUND DOG(彼らも尾崎と同じようにソニーから離れて参加)そして尾崎豊である。
余談ながらレコード会社というものは背景には大手の大企業がスポンサーについておりそこから販売経路や工場体性、宣伝製作のシステムをもっている。
しかしこの新しいレコード会社にはそんな後ろ盾もないものであり、レコード会社にこれまで権利で搾取されてきたと考える人間たちがつくったようなものであり「自分たち」、「俺たちのレコード」と銘打っての設立であった。