1988年 7月
話は少し懐かしい話へ
「うちの昔ボーヤやってたキヨシ君がね。キヨシの話になりますけど。キヨシ君はね、レッズに入る前はね(笑)あれはどこだったけなぁ。
そう、あれは下北の村さ来かな。プロのベーシストを目指すか、それとも裏方のプロになっていくのか、悩んでいると。「キヨシ、そこまでやる気があるんだったら、プロを目指すんだ」ポン!と肩をたたいてあげたあの一瞬がなかったら、今頃のキヨシ君はなかったと言っていい(笑)」
「すごい、なんか足向けて寝られないじゃない。」
「あいつねぇ、でもひどいんですよ。これがまたね。あいつの成人式の日にね、いきなり俺んちに電話かけてきて、夜中の、まず最初10時ころかかってきたのかなぁ。「尾崎、成人式なんだから俺の祝いに来いよ」かなんか言ってねぇ酔っ払って・・「イヤ、キヨシ悪い。すごい疲れてるからごめんな」とか言って、俺も飲んでたけど。」
「どっちもどっちだ。」
「で、またかかってきてねぇ、3・4回くらい、夜中の2時くらいまでかかってくるんでね、「こりゃあ、行ってあげるしかない、行くしかない」と思って、酔い冷ましてタクトで。」
「タクト(笑)」
「あいつん家もニュージャージーですからね。」
「近い。」
「近くもないんですよ。ニュージャージーの隣町って。そしたらね、着いたらキヨシもう出来あがちゃっててて(笑)「ヨー尾崎!」って一言交わしたら、バタッとか寝ちゃって(笑)なんだったのかなぁって。周りのキヨシの友達と話しながら、「どうも初めまして、尾崎豊です」とか言いながら、「皆さん二十歳になられたそうで、おめでとうございます」とか言ってね。シラーっとしながら、「キヨシそうか」みたいな。」
「類は友を呼ぶっていうんですよ。そのキヨシ君が、今や立派なね。レッズがエッグマンでやってる頃にね、見に来たでしょう? 一回。」
「見に行きました。」
「でね、わりと後ろの方で見てたの。ふっと見たら前の方のキヨシ君サイドの方にね、一人ピョコンと頭だけ飛び出していて、拳振り上げて「キヨシーー!」と、やみくもに叫んでる男が一人いたの。」
「酔っ払ってました(笑)」
「やっぱり(笑) どこかで見た後頭部だなぁと思ってたの。」
「そうですか。だから嬉しかったんですよ。今回は「紙切れとバイブル」って曲の中で、ギターのシャケが弾いてくれてるんですよね。ドシラソファミレド教えちゃって(笑)
昔、高校生だった頃、「僕、ロックンロール好きなんです」って、「あーロンクンロール、チューニングいらないからねぇ」だって(笑) 名文句だなぁって今だに僕はね(笑) 」