時間は残されていないと何度もスタッフと尾崎が思い続けてきた毎日も終わりがきようとしている。
その予定されていた最終日というものがきた。
寝転んだり、座ったりしてペンを走らせている尾崎、何度書き直してもこの曲の詞の出来上がりはこの最終日まで続いていた。
そのうちに尾崎は須藤氏にこう切り出す。
「須藤さん、一度家に帰らせてください、家に帰ってまた来ますから」
と話し出す。
すると須藤氏は
「なに言ってるんだ、今晩までに、歌を入れなかったらレコードは出ないんだよ」
「いや必ず帰ってきますから、2時間だけ家に帰らせてください」
これには須藤氏も折れて、条件を出した。
「じゃあ、絶対に電話を切らないように、受話器を上げておかないようにね。何かあったら電話するから」
こうして尾崎は少しの間、家に帰ることになった。
このたった、1日という数時間の期間を長く感じたり、心配した時間は恐らくレコーディングスタッフたちの間にはなかったであろう。
あれまで、書くことができなかった詞を完成させて帰ってくるということはあまり期待していなかったに違いないが、尾崎は家に帰ってしまった。
この話の流れはあまりにも有名であるが、ゆっくり追っていきたい。