matagorou’s blog 尾崎豊 自由に生きられるかそして感動を得られるか

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室蘭文化センター

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1985年 11月29日 室蘭文化センター

20歳の朝もまた雪であった。
札幌から室蘭までメンバーをのせた大型バスはスパイクタイヤをはいていたにも関わらず凍結した路面を滑りながら、走っていた。

会場に着くと全国各地から尾崎の20歳を祝う電報やプレゼントが届けられていた。
リハーサルを終えてからの本番への時間の流れはすぐだった。

SEのテープが切れるとグランドピアノの前に尾崎は現れる。

1曲目「卒業」
それは20歳になって初めて歌う「卒業」であったが、この曲をうたうとき尾崎には少なくとも停学になったことや、退学で流した涙たちが一挙にフラッシュバックすることがあったであろう。
しかし尾崎のなかの「卒業」というものは思い出としてではなく、この日から前進するために気にしないで歌えるものになっていたのかもしれない。

2曲目の「彼」「DRIVING ALL NIGHT」「BOW!」と続くのはいつもの流れだ。
「街の風景」で祈るように歌った尾崎であった。

ダンスホール」「Teenage Blue」「米軍キャンプ」と続いていく。
余談ながらこの室蘭でのライブはステージの客席との間隔が少し空き過ぎていたが、「SCRAP ALLEY」で尾崎はギターの江口氏と一緒にその空いた空間へと出て行き観客と接近してスタッフを大いに困らせたという。

「存在」を歌い終わるとようやく尾崎は語り出す。

「みんなまだ俺が高校生だった頃の話を聞いてくれるかい? それは俺がまだ高校1年の頃だった」

「俺にはあんまり友達がいなくって、休み時間になるとこうやって1人で机に座ってウォークマンを聴いていたんだ」

「テープの中身は例えば、B・スプリングスティーンや、J・ブラウンや佐野元春浜田省吾なんかを好んで聴いていたんだ」

「そんな風に俺は休み時間いつも1人でモンモンとしていた。だけど!そんな俺のことをクラスの連中はみんな白い目でみやがった、それでも俺は負けなかった!!」

「休み時間も終わりのほうになってきて、俺は・・もう一度周りを見渡してみたんだするとさっきよりももっと大勢で俺の事を白い目で見ていやがった・・・それでも俺は負けなかった!!」

「ある一人の少年が俺のほうに近づいてきてこう言ったんだ。」

「ねぇねぇ尾崎くんなんでそんなに怒ってるの?」

「よく聴けこれがロックンロールだ!」

と言うと、いつものようにメンバーの演奏が始まる。

「みんな用意はいいかい?」

「1--- 2--- 3----」

「1,2,3,4!!」

12曲目「ハイスクールRock`n`Roll」

ロックンロール、踊ろうよ

ロックンロール、くさら~ずに

ロックンロール、手を伸ばせば自由はあと少しさ~

「カモン!ピアノ!」

そう言うと尾崎はブルースハープを取り出して、小さなステージを右往左往する。
それにメンバーも追従するとステージが狭いことに尾崎もメンバーも観客も改めて思ったはずだ。

間奏の合唱が始まると、尾崎はマイクを客席に向けていく。

‘ロックンロール、踊ろうよ‘

‘ロックンロール、くさら~ずに‘

‘ロックンロール、手を伸ばせば自由はあと少しさ~‘

すると尾崎は観客の女性をステージにあげると、間奏の部分を歌わせる。

ロックンロール、踊ろうよ

ロックンロール、くさら~ずに

ロックンロール、手を伸ばせば自由はあと少しさ~

その女性も負けずと歌うと、尾崎は「どうもありがとう」
と言って、女の子を客席へと返す。

それからはただ何度も「自由」と叫ぶ
あとはサックスとの絶妙な絡みを終えるとベースがリズムを刻み出す。

「俺は街でこんなことを教わった、這い上がりたいなら好きにやればいい、自由気ままにやりたいやつは好きにやればいい」

「だけど、人を愛したいなら命を落とすこと。」

「俺達ぐらいの歳のやつらはみんな自分が這い上がることを夢見て暮らしているのはわかっている」

「だけど、金を手にし自分の名誉を手にしても1人ぼっちなるだけだ」

「一番大切なのは人を愛することだと思う」

「人を愛するならば、自分の心に叫ぶことそれがロックンロールだ」

「みんなついてくるかい?」

13曲目「Scrambling Rock`n`Roll」
また狭いステージを走り回ると尾崎は肩で息をしていた。
この北海道でのライブの連続が尾崎に疲労をもたらしていたことであろう。

ドラムビートがリズムをとると尾崎は、語り出す。

「俺もようやくハタチになった。」

「そして、十代の気持ちというものを大人の社会にはいっていくと」

「世代の違いで段々わからなくなっていくことがあるかもしれない」

「ただ、俺はいつまでも人を愛する気持ちや、自分自身が自分にとっての真実の道を歩いているかだけは、決して見失わずに」

「いつも自分の心の中の葛藤を続けていきたい」

14曲目「十七歳の地図
その声には少しの苦しさと枯れたような声が混じっていくが確実に歩んできた十七歳の地図をここに20歳でのステージとして歌っている尾崎の心境はどうであったろうか?
しかしこのMCには少なくともこれから生きていく「決意」があったことは疑いようがないであろう。

15曲目「愛の消えた街」16曲目「路上のルール」と曲が続いていく。するとようやく尾崎は語り出す。

「最近、俺はこんな事を考えている。」

「もう大分前の事になるけれど、このツアーが始まる少し前に毎晩一緒に戯れていた仲間のうちの一人がドラッグで死んでしまった。」

「道を歩いてる途中で鼻から脳みそを垂れ流して突然死んだ。その頃から、なんだか俺は、仲間っていうものを意識し始めるようになった。」

「そいつは2コ下の後輩で、いつも俺の顔を見ては」

「尾崎さーん、今度コンサート行きますから」

「なんて、最後の日もそう言って・・・毎晩のように一緒に居るっていうのに、そいつの叫びを誰も聞いてやる事が出来なかった。」

「仲間っていうものを意識し始めてから、イマまでの自分っていうのがなんだかとっても、やらしい人間に思えてならなかった。」

「自分に解るものだけを取り入れ、解らないものは否定し。」

「それから俺達は、そいつを弔うように毎晩のように喧嘩に明け暮れた。」

「誰が強いというわけでもないけれど、必死で自分の弱さと戦っているように思えてならなかった。
人を愛する事が、そんな生半可な事じゃ出来ないと・・・」

17曲目「15の夜」
「どうもありがとう」そう短く呟くと尾崎は袖へとはけていく。
アンコールを叫ぶ尾崎コールに応えて尾崎は出てゆく。

18曲目「Freeze Moon」
「今夜こうしてこんなにたくさんのみんなと夜をわかちあえました、どうもありがとう、それじゃあ今日もこうして夜をプレイしてくれている、俺の頼もしい仲間を紹介するぜ」

「オン、ギター、鴇田靖ベイベー!」

「オン、サクソフォン、阿倍剛ベイベー!」

「オン、ピアノ、樫原伸彦ベイベー!」

「オン、ドラムス、吉浦芳一ベイベー!」

「オンベース、田口政人ベイベー!」

「オン、キーパー、松原博ベイベー!」

「オン、ギター、江口正祥ベイベー!」

「俺達、ハート・オブ・クラクション!」
ピアノの演奏が始まり尾崎は語り出す。

「俺は自分に関わる、人々・・・照明やモニター、PA、ローディーやそしてメンバー、そして今夜こうして関わってくれた人々、集まってくれた人々に感謝してこのツアーを回っている」

「どうもありがとうそしてなによりも今夜こうして集まってくれたみんなに感謝したい!みんなを俺の仲間クラクションってよんでいいかい?」

‘いったいなんだったんだこんな暮らし‘こんなリズムいったいなんだったんだー‘

‘翼を広げ‘風を求めて‘

‘夜の街で風が吹くたび、俺たちは煙草をふかし、最後の1本を吸い終えると帰る金にすら足りなくなっちまう、

‘なあみんな夢はあるかい?夢を負い続けてゆくことができるかい?

‘うまく言うことなんてできやしない、ただ・・・今夜こうして夢見たみたいに、俺は生きていきたい‘

‘だからもっと速く、もっともっと速く‘

‘俺たちは走り続けてゆかなければならないんだ‘ ‘バーイ See You Rock Roll`


19曲目「ILOVEYOU」
ピアノのイントロで観客はわきかえる。
噛み締めるように歌い終えると尾崎はローディーから12弦ギターを手渡される。


20曲目「シェリー」
12弦ギターを担いで尾崎はシェリーを淡々と歌い出す。
歌い終えると、メンバーと並んで「どうもありがとう」

そう言うと尾崎の20歳初のコンサートは終わりを迎えた。

この日の尾崎は少しまとまりに欠けていたかもしれないが、力強かった代々木とは少し違う。
しかし後半「十七歳の地図」でのMCがその戸惑いを補っていたように筆者は思う。