1986年 8月
突然の帰国であったが、尾崎はいつものように朝霞の実家へと帰った。
NYでの暮らしぶりや今度はNYでレコーディングをするかも
という話をしていたが以前より増して頬はこけてまともな生活を送っているのかどうかが両親としては心配であった。
帰国してから家の中にいても、少し落ち着きがなく。
台所に呆然と立ち尽くす尾崎の姿があったという。
これは両親が最初に抱いた尾崎への不安だったのではないかと思う。
「まさか、うちの息子が・・」
ということは誰しもが考えて最初は疑いから始まるが、目の前にいた息子は以前よりとは何かが違って見えた。
数日が経って
「たまには康の新居にでも遊びにいったらどう?」
と促してみても
「そんな暇ないよ」
と返されていた。
尾崎の日本滞在はとても短かった。
すぐにNYに帰っていくとこのおかしな状況が長引けば尾崎は悪化してしまうだろうと考えるがなす術もなくまだ様子を見ることしかできなかった。