1986年 10月下旬
アップタウンにある尾崎のアパートには毎週土曜日だけフロントでアルバイトをしている女の子がいた。
尾崎は彼女の生まれた国のことについて話をしたという。
彼女はグリーンカードを申請している最中だった。
申請が下りたらその海を見に故郷に帰りたいと言った。
彼女の自慢話は昔モデルの仕事をしていたということだった。
でもそれは彼女をからかう時にしたことがあったがまんざらでもなかったみたいだったと尾崎は後に語っている。
ある日彼女は尾崎にこう言った
「あなたはNY以外のアメリカにはどこかに行ったの?」
という話だった。
思えば尾崎はこのマンハッタンから出ることがない生活をしていた。
そんなことを思いながら少し寒くなったこの国の別の地を見ようと尾崎は思い立ったという。