1987年 2月8日
前に録ったトラックを流しながら尾崎は音に多くの要求をプレイヤーやエンジニアたちにその都度要求していた。
いつも彼がレコードやライブでこだわるのは
「いい音」
という表現であった。
この「いい音」に関しては多くのことを語っていないので、今日の観点から察するに音質のことを指すのではないかと思うが、後年あまり自身が関わらずに世に送り出されたライブアルバムをリリースする際にも要求したことは「いい音で......」という注文だけであった。
「もっと鋭角的に」
「もっと四角い音がいいな」
「もっとあでやかに」
「つややかな感じがほしい」
ここまでプレイヤーやエンジニアたちに注文をつけることは初めてでもあった。
レコードを作る環境が違ってきたとはいえ尾崎が作詞、作曲をして歌うだけというだけの立場の人間ではなくなっている。
過去に3枚のレコードを出して、少しずつわかってきたこの世界の仕組みとレコードの作り方を意識して、言い方がと書き方がおかしくもあるが、改めて作品をつくっているという思いに尾崎はなっていたかもしれない。