1988年 7月
打ち合わせも終えて2人はお茶を飲んでいると尾崎は不意にこんなことを言う。
「そいえば今日ぼく、尾崎豊みたいなヤツと間違えられたんですよ」
と話し始めた。
「オザキユタカミタイナヤツとマチガエラレタ・・??」
田島氏は混乱ぎみに聞き返した。
「ええ、変でしょ、このぼくと間違えられたんですよ」
と尾崎は続ける。
「実はスタジオの原宿まで山手線で来たんですけど、僕の向かい側に二人の男が座っていて、そいつらがぼくの方をチラチラみて、指差したりしながら、何か話してるんですよ、失礼なヤツらだなと思っていたら。話し声が聞こえるんです」
「そしたら最近よく見るんだよな、あんな尾崎豊みたいな格好してるヤツって言ってるんですよそこでぼくも悔しいから聞こえるように うるさいなー、いちおう本人なんだけど、って言ってやったんですよ。ところが信じてもらえなかったみたいで、鼻で笑われてしまったんです、だからぼくその尾崎豊みたいなヤツと間違われたんです」
田島氏はこの話を聞いていて大いに笑ったといういう・・・コンサートも長くやってないしかしその作品や存在だけは多くの人に知られている、その頃の彼の状況を知れる物語る出来事だとも思ったという。
「じゃあこれで、よろしくお願いします」
そう言うと尾崎はスタジオを出た。
まだ陽も明るいうちにすべての確認動作業は済んでしまい笑顔を残して帰った。
終始笑顔を絶やさない、さわやかな印象の尾崎を最後に見たのはこの時が最後だったように思う、と田島氏はこのことを尾崎死後に回想している。